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司法書士 田口司法事務所 スタッフブログ

 

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芥川賞

 No.140  平成27年8月10日(月)

 

先月、お笑い芸人又吉直樹氏の著作『火花』が、第153回芥川賞

を受賞したことで大きなニュースとなりました。又吉氏が敬愛する

作家太宰治が受賞できなかった芥川賞を受賞したことで、「太宰超

え」などという見出しも躍ったほどです。

 

芥川賞と直木賞。又吉氏の受賞報道で説明し尽くされた感はありま

すが、誤解を恐れずおおざっぱにいえば、芥川賞は、新人の登竜門

であり純文学作品に対して与えられるもの。これに対して直木賞は、

大衆文学賞であることから、ある程度キャリアがあり人気を確立し

た作家の作品に与えられることが多い賞です。

とはいえ、80年以上の歴史を誇る両文学賞ですから、例外もあり

ます。たとえば、純文学作家である井伏鱒二は、『ジョン萬次郎漂
流
記』で芥川賞ではなく直木賞を受賞していますし、のちに社会派
ミステリー
の大家として名を成す松本清張は、「或る『小倉日記』
伝」で
反対に芥川賞を受賞しています。

 

また、大江健三郎氏が、東大在学中、デビュー作「死者の奢り」で

芥川賞候補になった半年後、「飼育」で再び候補になった際、選考
委
員からは「(前回の候補から)半年の間に流行作家となった大江
君が
受賞すれば、新人賞としての意味がぼやけてしまう」との声が
上が
ったそうです(結局、「飼育」で受賞)。新人の基準に厳格な
時代も
あったのですね。

一方で近年、すでに他の文学賞も多く受賞し、10年を超えるキャ

リアを持っていた阿部和重氏が芥川賞を受賞しており、阿部氏は

「(キャリアのある自分が)新人に与えられる賞を受賞したことは、

手放しで喜べない」と複雑な気持ちを吐露していました。

 

芥川賞には長い歴史がありますから、このほかにもさまざまなエピ

ソードが残されていますが、最大の事件といえばやはり冒頭に触れ

た太宰の落選でしょう。

第1回の候補となった太宰の「逆行」。敬愛する芥川龍之介の名を
冠
した文学賞を、熱烈に欲した太宰でしたが―実際は、賞そのもの
よ
りも、借金返済のために副賞の賞金が目当てだったという生々し
い話も―選考委員の1人であった川端康成が「作者目下の生活に厭
な雲ありて」と、太宰の私生活の乱れを指摘したこともあり落選。
この選評を知った太宰は烈火のごとく怒り、「小鳥を飼ひ、舞踏を
見
るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。さうも思つた」と川端
に
対する恨みつらみを文芸誌に寄稿し騒動となりました。

 

太宰ファンとしては苦笑いするしかないエピソードですが―それに

しても太宰の文章は、引用した悪口ひとつとっても、リズムが優れ、

切れ味も抜群です―後日談として、川端は後年の太宰を評価してい

たということですから、先輩作家として、才能ある太宰が受賞を機

に、さらに堕落していくことを気にしたのかもしれません。

ちなみに、太宰が逃した第1回の受賞作は、秋田県出身の作家石川

達三の『蒼氓』です。

 

同じ太宰ファンとして、私が又吉氏に親しみを感じたきっかけは、

あるテレビ番組で又吉氏が語っていた「最も影響を受けた太宰の言

葉」が、私の好きな言葉(No.15)と同じだったことです。

ところで、私はまだ件の『火花』を読んでおりません。

読まずに“作家又吉直樹”について何かを語ることは失礼に当たり

ますから、今回はこの辺で。

 

 

今朝のお供、

U2(アイルランドのバンド)の
『
How to Dismantle an Atomic Bomb』。

(佐々木 大輔)

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