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マーク・ロスコ
No.134 平成27年2月2日(月)
最近、マーク・ロスコの画集を手に取ることが多くなりました。
ロスコは、生前、もっぱら人間の基本的な感情(悲劇、忘我、運命)
を表現することに関心を寄せ、自分が絵を描くことは「自己表現で
はなく他人に向けたコミュニケーションである」と定義していまし
た。鑑賞者とのコミュニケーションを作品の根幹におくことから、
鑑賞者の内面を映す鏡のような作品と評されることもあるようです。
ロスコの作品には、タイトルがついていないもの(『無題』と題さ
れたもの)が多いため、「何が描かれている作品か」ということを
推測する手掛かりがありません。一方で、タイトルが無いことは、
作品の見方を限定されずに鑑賞できるという利点もあります。
海外では、悲劇性が強調されて受けとめられることもあるとのこと
ですが、私の場合、ロスコの作品を観ることで、意識が自己の内な
る深淵へとゆっくりと導かれ、自分を見つめ直すきっかけとなり、
その結果、様々な物事や感情が整理されて心が穏やかになっていく
ことに魅力を感じます。
ある本には、「多くの人は、ロスコの作品を右脳で鑑賞しているよ
うだ」と書かれていました。
言語や論理をつかさどる左脳と、感覚や感情をつかさどる右脳。
とすれば、ロスコの作品は、日々文章と向き合う仕事をしている私
にとって、理屈から感性へ、仕事脳からプライベート脳へ、スイッ
チを切り替えてくれる効果があるのかもしれません。
千葉県佐倉市にある川村記念美術館には、ロスコの『シーグラム壁
画』と呼ばれている作品群のうち、7点が収蔵されています。
『シーグラム壁画』は、もともと、「最高の料理と現代アートをと
もに提供する」というコンセプトで創設されたレストランから、ロ
スコが一室の装飾を依頼されて作成したものでした。
ところが、レストランの雰囲気に幻滅したロスコが、契約を破棄し
てしまったため、これらの作品群は一旦お蔵入りとなってしまいま
す。
その後、9点がロンドンのテイト・ギャラリー(テイト・モダン)
に寄贈され、1990年には川村記念美術館が7点を購入したこと
により、これらの作品群を鑑賞することができるようになりました
(残りはワシントンDCのナショナル・ギャラリーなどが所蔵)。
テイト・モダンと川村記念美術館では、これらの作品群のために、
ロスコが望んだとおり、ロスコの作品のみを展示した一室を設けて
います。
ロスコ作品のみが飾られた空間を持つ美術館は、上記の美術館をあ
わせても、世界でたった4つだけです。
いつかこれらの美術館を巡る旅をしてみたいものです。
※本文の情報は、私の所有している海外版の画集や書籍から得たも
のであり、もしも誤りがあるとすれば、その全ては私のつたない語
学力に起因するものであることをお許しください。
今朝のお供、
SEKAI NO OWARI(日本のバンド)の『Tree』。
久しぶりに現れたヒットチャートを駆け抜ける若いバンドにワクワ
クしています。
青さも感じるけれど、求める音に対してはもっと尖っていけばいい。
(佐々木 大輔)