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司法書士 田口司法事務所 スタッフブログ

 

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本といつまでも

No.69  平成23年9月20日(火)
 
皆さんにとって「幸せだなあ」と思うのはどんなときでしょう。
私にとっては、夜、ベッドに入って好きな本を開くその瞬間が、至
福の時です。
 
当ブログでも、村上春樹や太宰治、カズオ・イシグロなど好きな作
家をとり上げてきましたが、彼らのようないわゆる「純文学」と呼
ばれるジャンルの作品だけではなく、エンターテインメント作品も
大好きです。中でもミステリーは特別で、休日の前夜など、明日を
気にしなくてもよい夜は、「今夜はこの1冊だけにしよう」と決心し
ておかなければ、2冊、3冊と読みふけってしまいます。
 
ミステリー好きの原点は、子供の頃夢中になって読んだ江戸川乱歩
の「少年探偵団」シリーズにあります。父の読んでいた同シリーズ
が、祖父母の家に当時のまま揃えられており、幼い私は祖父母の家
に遊びに行くと、いつも書斎に籠って読んだものでした。
乱歩が少年少女向けに書いた同シリーズ、とはいえ、そこは日本を
代表する推理小説の大巨匠、子供だましや手抜きは一切ありません。
「ですます調」の柔らかく品の良い文章で書かれているものの、大
人になった今読み返しても、夕暮れの描写や夜の闇に包まれた洋館
が醸す怪しさには、思わず振り返り背後を気にしてしまうほど。
そういえば、小学校からの帰り道、小説の一場面を思い出し、「あの
角を曲がった途端、そこに怪人二十面相がいるのではないか」と、
風に草木がざわめく薄暮の中、身を縮めながら家路を急いだことも
ありました。
 
その後もコナン・ドイルやアガサ・クリスティなどの名作から、日
本の乱歩賞受賞作まで、好きな作品を挙げるときりがありません。
また、中学生の頃は、綾辻行人ら京大推理小説同好会出身者を中心
とした「新本格派ブーム」にもはまりました。
 
そんな懐かしい思い出と、新しく手にしたミステリー数冊によって、
この連休はちょっと夜更かしをし過ぎたかな。
 
 
今朝のお供、
RED HOT CHILI PEPPERS(アメリカのバンド)の
『I’m With You』。

                      (佐々木 大輔)
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本屋さん

No.50  平成23年2月28日(月)

 
最近、コーヒーミルを買い換えました。
今まで使っていたものよりコーヒーが美味しく出来るようになっ
て、幸せな安らぎのひとときを過ごしています。以前のブログ
(No.23)でも書きましたが、私は、自分で挽いた豆をハンドドリ
ップで淹れるのが好きなのです。
 
お店で飲むコーヒーも好きで、素敵なカフェを見つけると、思わず
吸い込まれるように入ってしまいますが、それ以上に強い吸引力を
感じるのは本屋さんです。もはや抗(あらが)えません。
ちょっと空き時間ができると本屋さんを探してキョロキョロしてし
まいますし、友人との待ち合わせに本屋さんを利用することもよく
あります。本選びに夢中になりすぎて、友人から声をかけづらいと
の苦情はありますが・・・気にしません。
本を選ぶとき、あらすじを参考にすることはもちろんですが、美し
い装丁に目を奪われ、「ジャケ買い(装丁で本の内容が好みかどう
か見当をつけて購入)」することもしばしば。
他にも、手にしたときのしっくり感、本を開いたときの匂い、紙質
と文字配列の妙などに惹かれ、ストーリーの予備知識なしに選ぶこ
とも楽しみのひとつです。
海外の書籍など入手しにくいものは、インターネットで購入します
が、それ以外はなるべく街の本屋さんで買うことにしています。と
にかく、本屋さんという空間が好きで好きでたまらないのです。
大学生の頃は、毎日近所の本屋さんに通い、年間300冊ほどの本
を読んでいました。部屋に本棚が2つ3つと増えていき、部屋自体
が本屋さんのようになっていったことを喜んだものです。
 
ところが最近は電子書籍が隆盛で、先日もアメリカで大手の書店が
破産法申請をしたとのニュースを見ました。
正直に言うと、私も利便性という点においては、電子書籍に魅力を
感じています。
また、紙を使わないので環境に優しいことは事実でしょう。場所も
とらない。さらには電子書籍ならではの試みとして、小説を映像や
音楽と融合させることも行われているようです(私は必要性を感じ
ませんが)。
 
当事務所には、最新刊を中心として3000冊以上の法律専門書が
本棚に並んでいます。
一冊一冊、スタッフの勉強の跡が残った書籍です。
この3000冊の他に、所長が学生時代に使い込んだ法律専門書も
数多くあります。
もしもこれらの書籍が、すべて電子書籍になったら?
空っぽの本棚にiPadやキンドルがぽつんとひとつ。用は足せて
も・・・何だか味気ないですよね。
 
私は、ハンドドリップで淹れたコーヒーを片手に、紙の手触りを楽
しみながらページをめくり、新しい知識の世界へといざなわれるの
です。
 
 
今朝のお供、
桑田佳祐の『MUSICMAN』。
あなたがビートルズによって「胸が張り裂けた」ように、私は小学
生の頃、あなたの音楽で胸が張り裂けたのです。

                                    (佐々木 大輔)

『ノルウェイの森』

No.38  平成22年12月6日(月)

 
発売は1987年9月。赤(上巻)と緑(下巻)の表紙。帯には「1
00パーセントの恋愛小説」のキャッチコピー。
恋愛と絶妙な装丁との組み合わせの効果もあってか、クリスマス商
戦にも乗り、売れに売れました。
その現象は一時のブームで終わることなく、20年以上経った現在
も新たな読者を獲得し、『ノルウェイの森』は村上春樹の代表作とし
て揺るぎない地位を確立しています。
 
「恋愛小説」、たしかにその通りのストーリーです。
とはいえ、作者自身は「恋愛小説」というより「リアリズム小説」
と説明しており、村上作品の特徴である“現実の裂け目”(と私が勝
手に呼んでいる)のない作品ということが、初心者にも読みやすく
人気を博している理由なのかもしれません。
 
しかし私には、この作品を読みやすさ故の単純な小説と言い切るこ
とはできません。
本作に至るまでの村上作品の主人公は、失うことを恐れて自ら決定
してこなかったという共通点があります。決定するということは失
うことと背中合わせの行為です。一方を選ぶとき、選ばなかった一
方を得ることはできません。それを避けるがため、村上作品の主人
公は自ら決定することなく、向こうからやってくる現実をただ受け
入れることでやり過ごしてきたのです。
ところが、この作品の最後で主人公は、失うことを認めたうえであ
る重大な決定をします。これは村上作品の大きな変化を告げる一作
でもあるのです。
 
今週末、映画『ノルウェイの森』が公開されます。
村上作品が映像化されることはほとんどありません。
作者自身も、当時のインタビューでは本作について、「(映画化は)
無理ですよ。だれにもできない。僕が一番うまく頭の中でつくった
から」と発言していました。
恋愛小説の体を採り、なめらかな運びで「決定と再生」を描いたこ
の作品を、はたしてトラン・アン・ユン監督はどのような切り口で
見せてくれるのでしょうか。
 
 
今朝のお供、
The Beatlesの『RUBBER SOUL』。
今回の映画化に伴って、サウンドトラックとしてビートルズの原盤
使用が許可されたことも大きなニュースになっていましたね。

                                    (佐々木 大輔)

『悪人』

No.25  平成22年9月6日(月)
 
こんにちは。田口司法事務所です。
 
私の好きな作家のひとりである吉田修一の代表作『悪人』が映画
化され、いよいよ公開が迫ってきました。
いつも観よう観ようと思っているうちに映画の公開が終わってしま
い、後からDVDで観ることになってしまう私。今回こそは映画館で
観ようと思っています(これもいつものことですが…)。
 
『悪人』の映画化について、正直に言うと、配役を聞いたときには
あまりピンときませんでした。原作のイメージが自分の中に出来
上がっていて、それを誰か既知の人物と重ねることが難しかった
からなのかもしれません。それほどまでにこの『悪人』という小説
は、しっかりと「人間」が描かれています。
吉田修一という作家は、さりげない筆致で、まるで鋭いメスのよう
にすっと人間の本質に切り込んでいきます。
例えば、桐野夏生がえぐるようにして本質を暴くのとは対照的な
印象を受けます。
しかし、この『悪人』は、重い。
しっかりと念を押すように、人間の思いや欲望を刻みます。
 
また、吉田修一は様々なスタイルで書き分けることのできる器用
な作家です。
『悪人』とは正反対の軽妙なタッチで書かれた『パレード』という小
説があり、これも私の大好きな作品です。
『パレード』の方が、先に挙げた彼の特徴がよりよく表れているか
もしれません。
 
もうひとつ。彼の芥川賞受賞作『パークライフ』には、秋田の角館
がほんの少しだけ出てきます。興味のある方はこちらもいかがで
しょうか。
 
 
今朝のお供、
Blur(イギリスのバンド)の『Parklife』。

                                    (佐々木 大輔)

恍惚と不安のもとに

No.15  平成22年6月14日(月)
 
こんにちは。田口司法事務所です。
 
佐々木倫子著の漫画『おたんこナース』にこんなお話があります。
主人公の看護師は作家太宰治の大ファン。そんな彼女が偶然、見た目が
太宰そっくりの入院患者さんを担当することになります。
彼女はその患者さんに憧れの太宰を重ね合わせ、淡い恋心を抱きます。
「きっときれいな愛人がお見舞いに来たりするんだろうなあ」などと想
像するのですが、残念ながらその患者さん、彼女のイメージとは全く一
致しません。
「勝手な妄想だったんだ」と彼女は自分に言い聞かせると、恋心を捨て、
看護師としての仕事に徹する決意をします。
・・・・・・
退院の日。その患者さん、見送りに出た彼女のもとにすっと歩み寄ると、
彼女の耳元でひと言、「グッドバイ」。
 
主人公の彼女のみならず、多くの太宰ファンを悶絶(?)させる秀逸な
お話です。
実は、私も悶絶させられたファンのひとり。太宰の作品は、10代の頃、
読み耽りました。今でもこの時期になると手に取ってしまいます。
太宰に再会できる喜びに顔を紅潮させて本を開くと、当時の書き込みや
傍線があちらこちらに見つかり、たちまち赤面。
それでも、多くの言葉に励まされてきたんだなあとの感慨に、今度はし
んみり。
 
ひとつ紹介しましょう。
「人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦し
んだことがあります、と言い切れる自覚ではないか」
(『東京八景』より)
 
太宰は、人間の弱さに対し、誰よりも敏感で、優しいまなざしをもった
作家でした。
 
6月19日。桜桃忌。
今日の最後のあいさつも、『津軽』から太宰の言葉を拝借して。
「命あらばまた他日。元気で行こう、絶望するな。では、失敬」

                                    (佐々木 大輔)
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