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カルロス・クライバー
No.125 平成26年7月28日(月)
今年は名指揮者カルロス・クライバーの没後10年。私にクラシッ
ク音楽の面白さを教えてくれた指揮者です。
20世紀最後のカリスマと呼ばれ、キャンセルは日常茶飯事、初め
てウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの指揮者に決定した
時は、世界中継の当日にキャンセルされたときのため、テレビ局が
中継用に前日の演奏会を録画して万一に備えていたことや(ニュー
イヤーコンサートは、大晦日にも同じプログラムで開催され、元日
の演奏会が世界中に中継されます)、代役として非公式にアバドが
控えていたことなどが話題になりました。
そのほか、指揮者カラヤンから、なかなか指揮台に上がらない理由
を問われ、「冷蔵庫が空になるまで指揮はしない」とはぐらかした
というエピソードや、極端に狭いレパートリーからは、変わり者で
気難しい人のように思われますが、どうやらそのとおりの人であっ
たことは間違いないようです。
彼の残した希少な録音は、全てが名演として有名ですので、私が改
めてここに書くまでもありません。
そこで、今回は、彼の若き日のリハーサル映像(オペラ『こうもり』
の序曲)を紹介します。
リハーサルに見る彼は、しばしばオーケストラの演奏を止めて指示
を出します。音楽を言葉にするというのは困難を極めることと思い
ますが、ウィットとユーモアに富んだ的確な指示で(法的に看過で
きないような喩えもありますが)、オーケストラから自分の理想と
する音を引き出す彼の手腕は見事。
たいていのオーケストラは、演奏を途中で止められることを嫌い、
指揮者の長広舌など聞きたくないというのが本音でしょうが、彼は
一切の妥協をせず、文学的な表現でもって自分より年長者の多い団
員を説得します。
そしてその効果は、私のような素人耳にもはっきりわかるほど。指
示を受けたオーケストラの音は、「これぞクライバー」という音に
一変。
彼の(本番での)演奏は、テンペラメントに満ちたものと評される
ことが多いのですが、その裏で実に緻密なリハーサルを行っていた
ことは、映像が公開された当時、多くの評論家やファンを驚かせた
ものでした。
ちなみに、『こうもり』序曲は、彼の得意のレパートリーであり、
後年、バイエルンとのものが2種(映像として残された方は、弾力
が効いて、間が絶妙)、前述のニューイヤーコンサートでのもの
(蝶のように舞い、蜂のように刺すかのような演奏)が正式な録音
として発売されていますが、リハーサル時の演奏は、後年の自身の
演奏よりも、父エーリッヒ(父親も偉大な指揮者でした)の演奏に
似ているように感じます。
今朝のお供、
クライバー指揮ウィーン・フィルによるベートーヴェンの『運命』。
シリアルナンバー入りのアナログ盤ボックスセットを予約してしま
(佐々木 大輔)
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