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『バッファロー’66』
No.126 平成26年8月11日(月)
私にとって思い出の映画、『バッファロー’66』(ヴィンセント・
ギャロ監督・脚本・主演)を紹介します(※ネタバレあり)。
観る度、若さのかさぶたをはがすような気持ちになる映画です。
―刑務所を出たばかりの主人公ビリーは、ニューヨーク州バッファ
ローにある実家に戻るため、両親へ電話をかける。ところが、彼女
もいないのに見栄を張って「フィアンセを連れて帰る」と嘘をつい
てしまったことから、通りすがりの少女レイラを「フィアンセ役」
として拉致し、実家へ向かう―
映画冒頭から、エゴイスティックなビリーのダメ人間ぶり、横暴ぶ
りが全開です。
そして、簡単に逃げ出せそうなシチュエーションの中、なぜか逃げ
出すことなく、ビリーと行動を共にするレイラ。
―ビリーはレイラを連れて実家に戻るものの、両親はビリーにまる
で関心がない。癇癪持ちの父親とアメフトに夢中の母親に、何とか
挨拶を済ませたビリーは、刑務所に入る原因を作った人物スコット
への復讐を果たすため、再びレイラと共に実家を出る―
ビリーの生い立ちを垣間見たレイラは、一緒に行動するうち、ビリ
ーの孤独、純粋さ、優しさを理解し、次第に好意を持つようになり
ます。
それにしても、レイラを演じるクリスティーナ・リッチがとても魅
力的。時には恋人、時には母親のように、ビリーのことを優しく包
み込みます。彼女のぽっちゃりとした体形は、安息の象徴なのかも。
―「スコットを撃って、俺も死ぬ」。そう決意したビリーは、レイ
ラをモーテルに残し、ひとり拳銃を手に、スコットの経営する劇場
へ―
さて、ビリーの復讐劇はどのような結末を迎えるのでしょう。
YES(イギリスのバンド)の曲「Heart of the Sunrise」にのせて、
ギャロの才気煥発な復讐シーンは必見。
映画のラスト、ドーナツ屋で交わされる会話は、モノトーン調で淡
々と進んできた物語に、一輪の花が咲いたような、幸せな色を差し
ます。決して豪華な花の色ではないけれど。
ホットチョコレートよりも、ハート形のクッキーよりも甘いハッピ
ーエンド。そして、始まりの予感。
ビリーがやっと手にすることができた安らぎ。
でも、この安らぎに身を委ね続けるわけにはいかない。
だけど、もう少しだけこのままいさせてほしい。
私にとって青春の1本であるとともに、モラトリアムが終わったこ
とを残酷なまでにはっきりと突きつける映画でもあります。
今朝のお供、
(佐々木 大輔)
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