最新記事
ブログ内検索
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
1票の価値
No.49 平成23年2月21日(月)
1月25日、仙台高等裁判所秋田支部において、昨年7月の参院選
で生じた1票の格差が、「違憲状態」であるとの判決が出されまし
た。全国8高裁6支部で選挙無効を求めた裁判のうちのひとつです。
た。全国8高裁6支部で選挙無効を求めた裁判のうちのひとつです。
同日の福岡高裁那覇支部では同じく違憲状態、高松高裁では昨年の
東京高裁(午後の部)に次ぐ2件目の「違憲」判決が出されました
(1月28日の福岡高裁でも「違憲」判決)。
投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態であれば違憲状態と
判断され、これが合理的な期間内に是正されない場合には違憲とな
ります。
ただし、選挙無効の請求は、いずれの裁判においても棄却されてい
ます。
私たちは20歳以上であれば、1人1票の選挙権が与えられていま
す。これだけを見ると、投票価値の平等は守られているのではない
か、と思いますよね。しかしこれは形式的な平等であって、実際に
は住んでいる地域によって、投票価値に不平等な状態が生じている
のです。
私の住んでいる秋田県を例にとると、鳥取県を1票とした場合、先
の参院選では0.52票しかありませんでした。
これはどういうことかというと、鳥取県の有権者が投じた1票に対
して、私が投じた1票は半分の価値しか無かったということです。
もちろん私は、少しでも日本が良くなればという願いを込めて1票
を投じたわけですが、残念ながら私の切なる声は、鳥取県の有権者
の声に比べると半分の重さでしか受け止めてもらえなかったという
ことなのです。
悔しいと思いませんか(決して鳥取県の有権者を恨んでいるわけで
はありません)。
そしてこれは、悔しいという感情論ばかりで済む問題ではなく、結
果として「重みのある1票」を与えられた一部の有権者によって選
出された議員が、法律を制定したり、総理大臣を選出したりすると
いう、非民主主義的な状態を生むことになるのです。
一方で、地域の実情もあるでしょうから、調整は必ずしも簡単では
ないとも思われます。
しかしながら、いかに難しい問題であろうとも、法律家などの専門
家に解決を任せきりにするのではなく、私たちも一緒になって、法
の下に平等であることを保障した憲法第14条を守っていかなけれ
ばならないのです。
今朝のお供、
THE DOORS(アメリカのバンド)の『ハートに火をつけて』。
思い入れのあるロック・アルバム10枚に入るCDです。
私の部屋には、ヴォーカリストであるジム・モリソンのポスターが
飾ってあります。
(佐々木 大輔)
(佐々木 大輔)
PR
詐欺罪1―お釣り
No.47 平成23年2月7日(月)
皆さんはお釣りを間違えられた経験ありませんか?
例えば、1000円の買い物をして五千円札を出したところ、店員
さんが五千円札を一万円札と間違えて、9000円のお釣りを渡し
てきたとします。そこで「得したぞ!」と思って何も言わずそのま
まお釣りを受け取った場合、これは罪になるでしょうか?
良心が痛む・・・だけ?
結論から言うと、刑法246条の詐欺罪が成立します。
詐欺罪とは、専門的には「人を欺いて錯誤を生ぜしめ、その錯誤に
基づく財産的処分行為により、財物または財産上の利益を得ること」
で成立する犯罪です。
分かり易く言うと、「財物等を入手するために相手を騙し、騙され
た状態にある相手が渡したその財物等を受け取る」と詐欺罪になり
ます。
た状態にある相手が渡したその財物等を受け取る」と詐欺罪になり
ます。
なので、上記のケースに当てはめてみると、お釣り(財物)が間違
っていることを気付きながら店員さんに告げないことは、積極的に
ではないものの店員さんを騙したことになります。また、店員さん
は間違いを指摘されなかったことで過分のお釣りを渡してしまった
のですから、騙された状態でお釣りを渡していることになります。
そしてこの場合、お釣りを受け取ろうと手を差し出した時点で詐欺
未遂罪(詐欺罪は未遂も処罰対象になります)が成立し、お釣りを
財布に入れた時点で詐欺罪が完全に成立します。
では、今度はお釣りが多いことに気付かず受け取り、家に帰ってか
ら気付いたとしましょう。「まあ、いいか」と思い、そのままお釣
りを返さなかった場合、詐欺罪になるでしょうか?
りを返さなかった場合、詐欺罪になるでしょうか?
実はこの場合は詐欺罪にはなりません。
なぜなら、この場合には、相手を騙してお釣りを手に入れたのでは
なく、気付いたら手元にあった過分のお釣りを自分のものにしたに
過ぎないからです。騙す行為は相手の処分行為(上記のケースでは
お釣りを渡す行為)に対して行われなければならないのです。
ただし、詐欺罪が成立しない代わりに、刑法254条の占有離脱物
横領罪(他人の占有に属しない他人の物を、不法に入手する罪)が
成立します。
横領罪(他人の占有に属しない他人の物を、不法に入手する罪)が
成立します。
法定刑について。詐欺罪は10年以下の懲役(重いです)、占有離
脱物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科
料となっています。
脱物横領罪は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科
料となっています。
今朝のお供、
THE WHITE STRIPS(アメリカのバンド)の
『WHITE BLOOD CELLS』。
『WHITE BLOOD CELLS』。
2月3日、解散が発表されました。好きでした。解散発表から毎日
聴いていますが、今朝は一番好きなアルバムを選びました。
(佐々木 大輔)
相続における平等とは?
No.45 平成23年1月24日(月)
法律上、婚姻している夫婦から生まれた子供は「嫡出子」と呼ばれ、
そうでない子供は「非嫡出子」と呼ばれています(この「非嫡出子」
という呼び方には批判もあります)。
民法を見てみると、第900条で、非嫡出子の相続分は嫡出子の相
続分の2分の1と定められています。このような扱いは、平等をうた
う憲法14条に違反しているのではないかということが、以前から議
論されている問題なのです。
う憲法14条に違反しているのではないかということが、以前から議
論されている問題なのです。
憲法14条について、最高裁判所は、「合理的な区別を否定するもの
ではなく、あくまで不合理な差別のみを禁止するものである」と考
えています。しかし、何をもって「合理的な区別」「不合理な差別」
とするかという基準までは明示していません。
えています。しかし、何をもって「合理的な区別」「不合理な差別」
とするかという基準までは明示していません。
それでは、民法の非嫡出子に対する相続上の扱いは合理的といえる
でしょうか。
合理的とする根拠として、婚姻制度の維持ということが重視されて
います。法律婚で生まれた嫡出子とそうでない非嫡出子の相続分を
同等とすることは、非嫡出子の保護に厚すぎるという意見です。さ
らには、扱いを異にすることで婚外関係を抑止することができると
の意見も主張されています。
対する批判としては、婚姻制度を維持する重要性は認めても、生ま
れてくる子供に嫡出子と非嫡出子の区別をすることまでが正当化さ
れるわけではない。まして、区別ができるとしても、相続分に関し
てまで扱いを異にすることは別問題である、との主張がされていま
す。生まれてくる子供に不利益を与えることで婚外関係を抑止する
ことは、そもそも憲法14条のもとで正当かどうかという批判もあ
ります。
平成7年7月5日、最高裁判所(大法廷:15人)は、10対5で、
この非嫡出子に対する相続上の扱いを合憲とする判断を示しました。
「相続制度の定めは立法府の合理的な裁量に委ねられており、民法
が法律婚制度をとった結果、嫡出子と非嫡出子との間に区別が生じ
るのはやむを得ない。民法900条の規定は法律婚の尊重と非嫡出
子の保護の調整を図ったものであり、2分の1という相続分は著し
く不合理とはいえない」との理由でした。
現在、民法900条の合憲性について、再び最高裁判所で争われて
います。そしてその判断は、通常であれば小法廷(5人)で行われ
るところ、大法廷においてされることになっています。最高裁判所
の大法廷で判断されるのは、過去に裁判所自らが下した判断を変更
する場合など、一定の重要な判断を下す場合に限られます。
つまり、大法廷に回されたということは、平成7年決定が覆る可能
性があるということです。
今後、目が離せません。
今朝のお供、
カニエ・ウェスト(アメリカのミュージシャン)の
『MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY』。
(佐々木 大輔)
(佐々木 大輔)
飲んだら乗るな
No.43 平成23年1月11日(火)
新しい年を迎え、新年会などでお酒を飲まれる機会も多いかと思い
ます。ワイワイ盛り上がり、ほろ酔い気分でふとお酒のラベルに目
をやると、そこには「飲酒運転は法律で禁止されています」の文字。
「そんなことは言われなくても・・・」というのが本音でしょうが、
それではこの飲酒運転を「禁止している法律」とは具体的に何を指
すのでしょう?
『六法』を開いてみると、道路交通法に飲酒運転についての罰則が
規定されています。
「酒気帯び運転」の場合には「3年以下の懲役又は50万円以下の
罰金」、「酒酔い運転」の場合には「5年以下の懲役又は100万円
以下の罰金」が科せられます。
「酒気帯び」とは、道交法施行令によると「呼気中アルコール濃度
が1ℓあたり0.15mg以上」を指し、「酒酔い」とは、アルコール濃
度にかかわらず「アルコールの影響により正常な運転ができないお
それがある状態」を指します。
また、刑法には、危険運転致死傷罪が規定されています。
「アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走
行させた場合」について、人を負傷させた場合は15年以下の懲役、
人を死亡させた場合には1年以上の有期懲役が科せられます。
お酒を飲んだら運転はしない。当たり前のことです。しかし、お酒
が入ると気が大きくなってしまうことも考えられます。「自分は酔っ
ていない」「少しの距離だから大丈夫」・・・このような甘えが、誰
かの、そして他ならぬ自分の大切な人生を奪うことになってしまう
のです。
それから。
自転車の飲酒運転も道交法違反となり、酒酔い運転には刑事罰が科
されることもお忘れなく。
今朝のお供、
AC/DC(オーストラリアのバンド)の『BACK IN BLACK』。
(佐々木 大輔)
(佐々木 大輔)
相続
No.39 平成22年12月13日(月)
当事務所にはさまざまな依頼がありますが、相続登記でいらっしゃ
る方もたくさんいます。
そこで今回は人の権利がいつ発生するのかを考えながら、相続につ
いてお話します。
お母さんのお腹の中にいる赤ちゃん(胎児)は、相続の権利がある
「人」でしょうか?
胎児にも生命が宿っている以上権利があるという意見もあるでしょ
うし、実際に生まれてくるまではまだ権利が無いのではないかとい
う意見もあるでしょう。
では、法律の世界ではどのように考えているのか。
民法を見てみると、権利を取得したり義務を負うこととなる能力の
始まりは出生による、と書かれています。ちょっと分かりにくいで
すね。
「出生」とは、お母さんの体から胎児の全身が出ることをいうと考
えるのが民法の世界では一般的です。
つまり胎児の段階では、まだ権利や義務は発生しないのです。
ところが裁判所は、相続や遺贈については、例外的に胎児はすでに
「生まれたものとみなされる」と考えて、無事に誕生した場合に限
り、相続の開始時点にさかのぼり相続権を取得できるとしています。
たとえば、お父さんが1月1日に亡くなった場合、胎児の段階では
相続権はありませんが、その後無事に誕生すれば、1月1日にさか
のぼって相続権を取得することになります。
ただし登記実務の世界では、胎児が相続や遺贈の対象となった場合
には、胎児名義で、権利を取得したことを登記することができるの
です。
裁判所の考え方によれば、1月1日の時点ではまだ生まれていませ
んから、相続の権利がありません。
一方では認められないことが他方では認められるのは、矛盾してい
るようにも思われますが、これは両方とも「胎児の利益保護」を第
一に考えた結果なのです。
裁判所は、出生後に得られるはずの相続権を胎児の段階で誰かに侵
害されることを防ぐため、そして登記実務は、胎児の段階で相続権
を認めることで胎児名義の登記を可能として相続権を明確にアピー
ルできるようにするため、このような理論を構成しているのです。
今朝のお供、
COLDPLAY(イギリスのバンド)の『美しき生命』。
(佐々木 大輔)