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司法書士 田口司法事務所 スタッフブログ

 

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風に吹かれて

No.154  平成28年10月17日(月)

 

聞いてびっくり、考えて納得。

今年のノーベル文学賞をボブ・ディラン(アメリカのミュージシャ

ン)が受賞したとのニュースに接した時の私の正直な感想です。

ミュージシャンによる文学賞受賞は史上初であり、受賞に対する賛

否は当然にあるでしょう。

それにしてもノーベル文学賞の英断、ロックだな。

 

私はディランの熱心なファンというわけではありませんが、中学生

の頃から耳にしてきた彼の作品について、今回のブログでは、音楽

ではなく、文学の側面から少し考えてみましょう。

 

まず、今回の受賞により、ノーベル文学賞の選考対象が、ポピュラ

ー音楽の歌詞(lyrics)にまで拡大されるきっかけとなるのでしょ

うか。

「文学」の定義にもかかわることですが、同賞の公式サイトによる

と、「どのような書式や文体で書かれたものであっても、文学的な
値をもつもの」が受賞の対象となるとされています。スウェーデ
ン・
アカデミーが発表したディランの受賞理由も、「偉大なるアメ
リカ音
楽の伝統の中で、新たな詩的表現を生み出した功績による」
とのこ
とでした。

 

これは、ディランの創作活動に対し、純粋に文学的価値を認めた結

果ということでしょう。

今回の受賞―文学者をさしおいてミュージシャンが受賞すること―

への批判に対する最もまっとうな反論は、「詩は、古くは詩人ホメ
スの時代から、朗読され、演じられてきた」というもの。

ディランは、詩(poem)の伝達手段として、朗読や演じることでは

なく、「音楽に乗せる」ことを選択したのです。

現代の吟遊詩人と呼ばれるゆえんです。

 

つまり、今回の受賞は、格調高き文学賞が大衆にすり寄ったわけで

はなく、むしろ伝統に根差した選考によるものと言えるのであり、

選考対象が拡大することになって「時代は変わる」(The Times
They
Are a-Changin’)ものではないと考えます。

 

私がディランの作品の中で特に優れて文学的と感じるのは、「見張
からずっと」(All Along the Watchtower)です。

見張塔から馬に乗った男が来るのが見えた時、堕落したバビロンが

崩壊したことを知るという『聖書』のエピソードをモチーフに、体

制に対する抵抗、革命を予感させるメッセージを、直接的な言葉を

用いずに訴えかける曲です。

一見(一聴)意味不明なディランの詩にも、じっくり向き合うと瞠

目する含蓄があります。

 

今回の受賞について、そしてディランについてはこれまで以上に、

評論家や研究家によってさまざまな分析がなされることでしょう。

結局のところ、本当の答えは風に吹かれているのかもしれませんが。

 

 

今朝のお供、

ボブ・ディランの『Street Legal』。

地味なアルバムかもしれませんが、5曲目(アナログ盤B面1曲目)

の「Is Your Love in Vain?」がたまらなく好きです。


                       (佐々木 大輔)

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