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贅沢な時間
No.155 平成28年11月21日(月)
「良い文章を書くには、たくさん本を読んでください」
先日、日本ペンクラブ副会長西木正明先生と会食させていただく機
会がありました。
西木先生のことは皆さんご存知かと思いますが、「凍れる瞳」「端
島の女」で直木賞を受賞された秋田県仙北市出身(旧仙北郡西木村)
の作家です。
私を誘ってくださった方の話によると、先生は、会食当日も選考委
員を務めている「さきがけ文学賞」の授与式に参加されるなどご多
忙を極める中、特別に時間をとってくださったとのことでした。
冒頭の言葉は、程良く場が温まった頃合い、同席した方からの質問
に答えて先生がおっしゃった言葉です。
お会いした先生の印象は、物腰が柔らかく色気のある紳士。どんな
質問にも丁寧に、かつユーモアと少しの毒を交えて答えてください
ました。アメリカ大統領選挙から音楽における同曲異演まで話題は
多岐にわたり、私など文壇の裏話には思わず身を乗り出してしまう
始末。
ちなみに、音楽家で最近のお気に入りはグスターボ・ドゥダメル
(ベネズエラ出身の若手指揮者)とのことですから、先生は私より
もはるかに感性がお若い!
会食させていただくに当たり、いくつか先生の著書を読み返しまし
た。その中のひとつが『極楽谷に死す』という短編集です。
先生と思しき主人公が、70年代初頭を共に過ごした友人たちとの
再会をきっかけに遠い記憶を呼び起こしていくという作品集で、思
い出の過去として描かれる70年代は熱気に満ちているのですが、
どこか刹那的な衝動に支配されているむなしさを感じます。
いや、むしろ、刹那的だからこその熱気だったというべきでしょう
か。
そう感じるのは、私が当時を生きておらず、結果を知った上で70
年代の不穏な熱気を振り返るからかもしれません。
「みんな、どこにいってしまったのだろう。」
本書を締めくくる一文にも、懐かしさと背中合わせのむなしさがに
じんでいるように思われます。
手持ちの著書の中から『極楽谷に死す』を含め何冊か持参したとこ
ろ、快くサインに応じてくださいました。
頂いたサインを眺めるたび、先生の冒頭の言葉を思い出し、「読書
という趣味を仕事にも活かしなさい」と背中を押される気持ちにな
ります。
今朝のお供、
THE YELLOW MONKEY(日本のバンド)の曲「砂の塔」。
カップリングには再終結後のアリーナツアーのライヴ音源12曲を
収録。15年振りのライヴの1曲目を飾った「プライマル。」、清
々しさと未練が刻まれた思い出からの卒業。 準備 ALRIGHT!
(佐々木 大輔)