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司法書士 田口司法事務所 スタッフブログ

 

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窃盗罪3―補足

No.70  平成23年9月26日(月)
 
今回は刑法の回です。
 
ここで少し補足をさせていただきます。
毎回刑法では「私の立場」を明らかにしてお話をしてきました。
No.62では不法領得の意思について「振舞う意思と利用処分意思の
双方が必要である」、No.66では財物について「財物とは有体物のこ
とをいう」と述べました。これにはどのような意味があるのでしょう。
実は、法律というのはそれぞれの採る立場により、導かれる結論が
異なることがあるのです。なかでも刑法は、特にその傾向が強い法
律です。そのため、あらかじめ自らの立場を明確にしてお話をしな
ければならないのです。
たとえば、不法領得の意思について、「窃盗罪の成立要件として、不
法領得の意思は不要である」という考え方もあるのですが、この立
場を採れば、判例が不可罰とするいわゆる使用窃盗(他人の物を一
時無断で使用して、後で返還する行為)も窃盗罪として認めやすく
なります。
なぜなら、使用窃盗を不可罰であるとする多くの説は、その根拠を、
「返還意思がある場合には不法領得の意思がない」という点に求め
ます。そのため、不法領得の意思を不要とする立場からは、使用窃
盗の可罰性も認めやすくなるのです。
 
それでは、ここからは前回(No.66)の財物性の続きを。
財産罪の客体である以上、財物には財産的価値が必要となります。
この点、判例・通説は、主観的な価値でも社会観念上刑法的保護に
値するものであれば財物に当たるとしています。この立場に立てば、
ラブレターも所有者にとって精神的欲望を満足させる価値がある限
り、不法な侵害から保護される必要が生じ、窃盗罪の対象となります。
一方、その価値が極めて低い場合には財物には当たらないとされ、
ポケットから汚れたちり紙13枚を窃取した事例を窃盗未遂とした
判決は、このことを示したものと考えられます。
ちなみに、ちり紙の財物性を否定しながら、無罪ではなく窃盗未遂
の成立を認めた結論は、実際に窃取した物が軽微な価値しかなくて
も、別の客体(たとえば、ポケットに一緒に入っていた財布など)
を窃取する可能性があったことに起因しています。
 
 
今朝のお供、
R.E.M.(アメリカのバンド)の『OUT OF TIME』。
2曲目の「Losing My Religion」。イントロが流れた途端、繊細で甘
やかな憂愁に支配され、私は一瞬にして中学2年生だったあの頃に
引き戻されます。R.E.M.解散のニュースは、またひとつ、私の青春
の終わりを告げるものでした。

                      (佐々木 大輔)
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