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司法書士 田口司法事務所 スタッフブログ

 

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NHK交響楽団

No.143  平成27年11月9日(月)

 

毎年秋は、国内外の主要なオーケストラの新シーズンが始まり、各

オーケストラがどんなプログラムを組んでくるのか楽しみな時期で

もあります。

中でもNHK交響楽団(N響)は、テレビやラジオでも演奏会を楽

しむことができることから、私にとって最もその演奏を楽しむ機会

が多いオーケストラといえるでしょう。

 

私がN響の演奏で思い出に残っているのは、まず、小澤征爾の指揮

とロストロポーヴィチのチェロによる「ドヴォルザークのチェロ協

奏曲」(1995年)。そして、普段優等生的なN響が珍しく熱く
え、興奮と感動のあまり泣きながら演奏する団員もいたというチ
ン・ミョンフンの指揮による「チャイコフスキーの交響曲第4番」

(1998年)です。

 

小澤征爾の演奏は、「ボイコット事件」(*)以来絶縁状態にあっ
両者が、32年ぶりに共演するという歴史的な演奏会でのもの。
しも阪神淡路大震災発生直後の演奏会ということもあって、始ま
と終わりは拍手なしの黙とうにより、静寂に包まれた異例の演奏
となりました。

「今、ここに鳴らさなければならない音」が切実な響きとなって、

和解に至る前の張り詰めた緊張感を飲み込むさまを聴くにおよび、

真の音楽を前にした時、私的な感情は一切の意味を失うことを思い

知らされた演奏でもあります。

 

さて、N響は今シーズン(2015年9月)から、パーヴォ・ヤル

ヴィを首席指揮者に迎えました。N響が「首席指揮者」というポス

トを設けたのは今回が初めてとのことで、ヤルヴィが初代というこ

とになります。

過去にN響と深くかかわった指揮者たちが務めてきたポストは、名
指揮者や常任指揮者あるいは音楽監督というもので、いったい首
指揮者とはどう違うのかと聞かれても私にはよくわからないので
が、とにかく、これからしばらくの年月、N響はヤルヴィとの演
を中心に活動していくことになります。

 

私が聴く限り、ヤルヴィの音楽作りに独裁的な色合いはなく、団員

個々から良いところを積極的に引き出した上で、それをリーダーと

してまとめ上げ、ひとつの方向へ導いていくため、オーケストラの

自発性が高められ、音楽に弾けるような喜びが輝きます。

 

N響は、ドイツ・オーストリアの伝統に根差した音楽作りをしてき

たオーケストラです。長きにわたりN響を指導してきたサヴァリッ

シュやスイトナーといった優れた指揮者の薫陶によるところも大き

いでしょう。その一方で、デュトワ時代には、エスプリの効いた色

彩豊かな音への変化が高く評価されました。

ヤルヴィの就任によってN響の音はどのように変わるのでしょう。

過去の客演、10月の演奏会からは、相性の良さがうかがえます。
レパートリーも多岐にわたる指揮者ですし、N響の新しい魅
力を存
分に引き出してくれることと期待しています。

 

 

*ボイコット事件(1962年)

若き日の小澤とN響が衝突し、N響が本番をボイコットした事件。

演奏会当日、団員のいないステージに小澤がひとり登壇した。

 

 

今朝のお供、

DEF LEPPARD(イギリスのバンド)の『ADRENALIZE』。

 

(佐々木 大輔)

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バック・トゥ・ザ・フューチャー

No.142  平成27年10月13日(火)

 

2015年10月21日午後4時29分。

マーティ(マイケル・J・フォックス)とドク(クリストファー・

ロイド)が『パート2』でタイムスリップした“30年後の未来”。

 

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作は、おそらく私が、子

供の頃から最も繰り返し観た映画ではないかと思います。テレビの

ロードショー(テレビ版の吹替えも懐かしい)、ビデオ、DVD…
セリフもほとんどそらんじているほど。

学生時代、3部作のDVDボックスセットが発売されたのにあわせ

て、この3部作を観たいがためにDVDプレーヤーを頑張って購入

したことも懐かしく思い出します。

 

1955年へとタイムスリップした『パート1』のラスト、時計台

に雷が落ちるシーンは、何度観ても手に汗を握りますし―結末を知

っていても毎回ドキドキできるというのは、エンターテインメント

の究極の理想でしょう―『パート2』で再び55年の“パーティの

夜”に戻るシーンを観てしまうと、再度『パート1』を見直したと

き、ステージでギターを弾くマーティの頭上に、思わずもうひとり

のマーティを探してしまいます。

そうそう、この時マーティの弾いた「Johnny B. Goode」(チャッ
ク・
ベリーが1958年に発表した曲)を聴いたチャック・ベリー
が、
マーティの演奏に着想を得て、後年「Johnny B. Goode」を作
曲し
たというタイムパラドックスも、音楽ファンをニヤリとさせる
演出
です。

 

さて、『パート2』で描かれた“30年後の未来”はどのくらい実
しているのか。

さすがに車は空を飛んでいませんが、天気予報は、秒単位とまでは

いかないものの時間単位でより精確な予報が出るようになりました

し、3D映像、多チャンネルテレビ、テレビ電話、指紋認証システ
ムそしてタブレッ
ト端末…。

マーティが履いていた自動で紐が締まるナイキのシューズは、20

11年にナイキがレプリカを限定販売したことでも話題になりまし

た。今年中に“本物”を発売することもナイキが宣言しています
(特
許は取得済みとのこと)。

これは、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』などにもいえることです
が、
未来を描いた名作が、科学者や技術者たちに、描かれた世界を
実現
しよう―あるいは、悲劇的な未来であれば未然に阻止しよう―
とい
う動機付けを強くするからこそ、実現したことでもあるのでし
ょう。
今年ノーベル物理学賞を受賞した梶田教授も、「主人公のア
トムでは
なく、お茶の水博士に憧れる少年だった」とのことですし。

 

そして、『パート3』。

最終作の舞台は西部劇の時代にまでさかのぼり、130年にわたっ

て過去と未来を行き来した3部作は、いかにもアメリカ的で前向き

なメッセージによって締めくくられます。

 

そう、「未来は何も決まっていない。未来は自分で作るものだ」。

 

 

今朝のお供、

ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(アメリカのバンド)の『FORE!』。

『パート1』の主題歌「The Power of Love」を歌ったヒューイ・

ルイスは、映画にもバンドオーディションの審査員役でカメオ出演。
 
                       (佐々木 大輔)

アンリ・ルソーがくれた夢

No.141  平成27年9月7日(月)

 

先ごろ読んだ小説の影響で、すっかりアンリ・ルソーに夢中になっ

てしまいました。

 

ルソーの画家デビューは49歳と遅く、それ以前は税関に勤務しな

がら絵を描いていました。そのため、いわゆるアカデミックな教育

を受けておらず、遠近法などの絵画技術を身に着けていなかったよ

うです。

技術的に稚拙と言われる彼の作品は、当時の評論家から酷評され、
無審査で応募者全員の作品が展示された展覧会では、新聞等での酷

評を知った人々が作品の前に群れをなし、銘々お腹を抱えて大笑い、

中には呼吸困難に陥った人もいたそうです。

しかし、晩年には、ルソーを評価する評論家や画家仲間も現れ、特

にピカソに影響を与えたというエピソードは、間接的にルソーの評

価を高める契機となりました。

とはいえ、未だ「日曜画家」「(画家ではなく)税関吏ルソー」な
と揶揄されることも多く、その評価が定まっているとはいえませ
ん。

 

先に挙げた小説には、ルソー(と彼に関わった人々)のエピソード

がふんだんに盛り込まれていて、ルソーを好きな方にはお馴染みの

話でも、浅学な私にとっては初耳の話も多く、人間ルソーを知るき

っかけとなりました。

 

ルソーの作品といえば、私にとって、『蛇使いの女』、『詩人に霊
感を
与えるミューズ』、『夢』など、ジャングルを描いた絵のイメ
ージが
強く、これらの作品を、「あの葉陰には見たこともないよう
な気味の
悪い生き物が潜んでいるのではないか」、「そんなじめじ
めとした茂
みの中に、裸で体を横たえることに抵抗はないのだろう
か」などと
つまらぬ想像や心配をしながら、どこか怖いものみたさ
で鑑賞して
いるところがありました。

改めて作品を見てみると、ルソーは大好きな自然を克明に描くため、

多種多様な緑色(作品によっては21種類も使用しているとのこ

と!)を使い分けており、その執念にも似た凄みが作品から伝わっ

てきます。

もっとも、神秘的でグロテスクな作品という印象は変わらないけれ

ど。

 

―情熱がある。画家の情熱のすべてが―

(原田マハ著『楽園のカンヴァス』)

登場人物が発したこの言葉のとおり、小説を読んでいる間、ルソー

が絵にかけた情熱、その作品を心から愛する人々の情熱にほだされ

て、ルソーと時代を共にしたような、夢を見ているように幸せな時

間を過ごすことができました。

夢から覚めた今は、時間ができると、手持ちの画集やインターネッ

トからルソーの絵を探し出し、“夢をみた”余韻に浸っています。

 

 

今朝のお供、

Blur(イギリスのバンド)の『The Magic Whip』。

                       (佐々木 大輔)

芥川賞

 No.140  平成27年8月10日(月)

 

先月、お笑い芸人又吉直樹氏の著作『火花』が、第153回芥川賞

を受賞したことで大きなニュースとなりました。又吉氏が敬愛する

作家太宰治が受賞できなかった芥川賞を受賞したことで、「太宰超

え」などという見出しも躍ったほどです。

 

芥川賞と直木賞。又吉氏の受賞報道で説明し尽くされた感はありま

すが、誤解を恐れずおおざっぱにいえば、芥川賞は、新人の登竜門

であり純文学作品に対して与えられるもの。これに対して直木賞は、

大衆文学賞であることから、ある程度キャリアがあり人気を確立し

た作家の作品に与えられることが多い賞です。

とはいえ、80年以上の歴史を誇る両文学賞ですから、例外もあり

ます。たとえば、純文学作家である井伏鱒二は、『ジョン萬次郎漂
記』で芥川賞ではなく直木賞を受賞していますし、のちに社会派
ミステリー
の大家として名を成す松本清張は、「或る『小倉日記』
伝」で
反対に芥川賞を受賞しています。

 

また、大江健三郎氏が、東大在学中、デビュー作「死者の奢り」で

芥川賞候補になった半年後、「飼育」で再び候補になった際、選考
員からは「(前回の候補から)半年の間に流行作家となった大江
君が
受賞すれば、新人賞としての意味がぼやけてしまう」との声が
上が
ったそうです(結局、「飼育」で受賞)。新人の基準に厳格な
時代も
あったのですね。

一方で近年、すでに他の文学賞も多く受賞し、10年を超えるキャ

リアを持っていた阿部和重氏が芥川賞を受賞しており、阿部氏は

「(キャリアのある自分が)新人に与えられる賞を受賞したことは、

手放しで喜べない」と複雑な気持ちを吐露していました。

 

芥川賞には長い歴史がありますから、このほかにもさまざまなエピ

ソードが残されていますが、最大の事件といえばやはり冒頭に触れ

た太宰の落選でしょう。

第1回の候補となった太宰の「逆行」。敬愛する芥川龍之介の名を
した文学賞を、熱烈に欲した太宰でしたが―実際は、賞そのもの
りも、借金返済のために副賞の賞金が目当てだったという生々し
い話も―選考委員の1人であった川端康成が「作者目下の生活に
な雲ありて」と、太宰の私生活の乱れを指摘したこともあり落選。
この選評を知った太宰は烈火のごとく怒り、「小鳥を飼ひ、舞踏を
るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。さうも思つた」と川端
対する恨みつらみを文芸誌に寄稿し騒動となりました。

 

太宰ファンとしては苦笑いするしかないエピソードですが―それに

しても太宰の文章は、引用した悪口ひとつとっても、リズムが優れ、

切れ味も抜群です―後日談として、川端は後年の太宰を評価してい

たということですから、先輩作家として、才能ある太宰が受賞を機

に、さらに堕落していくことを気にしたのかもしれません。

ちなみに、太宰が逃した第1回の受賞作は、秋田県出身の作家石川

達三の『蒼氓』です。

 

同じ太宰ファンとして、私が又吉氏に親しみを感じたきっかけは、

あるテレビ番組で又吉氏が語っていた「最も影響を受けた太宰の言

葉」が、私の好きな言葉(No.15)と同じだったことです。

ところで、私はまだ件の『火花』を読んでおりません。

読まずに“作家又吉直樹”について何かを語ることは失礼に当たり

ますから、今回はこの辺で。

 

 

今朝のお供、

U2(アイルランドのバンド)の
How to Dismantle an Atomic Bomb』。

(佐々木 大輔)

天使の分け前

No.139  平成27年7月13日(月)

 

3月まで放送されていた朝の連続テレビ小説の影響により、ウイス

キーブームに拍車がかかったことで、ニッカウヰスキーの代表的な

ブランドであるシングルモルト「余市」の原酒が不足してしまい、

これまで熟成年数ごとに商品化されてきた「余市」は、今後、ノン

エイジ(熟成年数を表示しない)のみの商品に集約されるとの話。

ウイスキーが好きな私としては寂しいニュースですが、基本お人好

しな性格ですから、多くの人がウイスキーを楽しんだ結果であれば

仕方がないと溜飲を下げています。

 

ウイスキーは、樽で長期にわたって熟成させる必要があるため、い

ったん原酒が不足してしまうと、すぐに増産というわけにはいきま

せん。再びお目にかかるまで、短くても数年(一般的なバーボンは

このくらい)、たいてい10年以上を要するのです。

もちろん、この熟成こそが、ウイスキーをコク深く、美しい香りを

まとった琥珀色の芸術品へと変身させるのですが、実は、熟成して

いる間にウイスキーは少しずつ蒸発してしまうのです。1年に2パ

ーセントずつ、スコッチウイスキーだけでも毎年ボトル1億600

0万本分のウイスキーが消えてしまうといわれています。

何とももったいない話ですが、古来、人々は、「天使に分け前を与
ることで、美味しいウイスキーを手に入れることができるのだ」
考え、この蒸発した分を「天使の分け前」とロマンティックに呼
でいるのです。

 

私は、ブレンデッドもバーボンもシングルモルトも(つまり、何で

も)好きで、その日の気分によって飲み分けています。

バランスのとれたブレンデッドウイスキーにブレンダーの職人芸を

感じながら、穏やかに一日の終わりを愉しむのもいいですし、ラフ

ロイグやアードベッグに代表される強烈な個性をもつアイラ島の
ルトウイスキーで、翌日の活力を漲(みなぎ)らせるのもまたいい
のです。

 

いつもよりボリュームを絞り気味にして好きな音楽をかけ、ゆっく

りとグラスを傾ける。

夜の静寂(しじま)に身も心も溶けていくような、ゆるやかなまど

ろみ。

目の前を天使が通り過ぎたような気がしたのは、グラスを重ね過ぎ

たせいなのかな。

 

 

今朝のお供、

MUSE(イギリスのバンド)の『Drones』。


                       (佐々木 大輔)
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